出雲うどん

出雲うどん 山太 宝庫うどん(冷)

出雲でうどん

出雲市民である坂本が美味いと教えてくれた蕎麦屋に行く。旧大社駅そばの店だ。平成二年に廃止されるまで、JR大社線が走っていた。今は終点の駅舎だけが保存されている。上砂川と同じだ。

出雲市駅から一畑電鉄に乗り、川跡(かわと、と読む)駅で乗り換えて出雲大社駅に着く。そこから参道を逆方向にぷらぷら歩く。天気が悪いのが残念だ。猫カフェを通り過ぎ、地図を見ながら目的地に向かう。あの辺りだな、と思ったところで、ふと、嫌な考えが頭をよぎった。

定休日じゃないだろうな。

不安になり、Googleマップで店の情報を確認する。

営業時間外

なんてこったあ!謀ったな、坂本〜!悔しいので店まで歩く。

やってない。

出雲うどん 山太

仕方なく、別の店に行く事にする。駅の近くに気になる店が一軒だけあったのだ。来た道を戻る。

ふと、気になる看板を見つけた。

「宝庫うどん」

出雲うどん、とも書いてある。出雲蕎麦といえば、戸隠、わんこに並ぶ三大蕎麦の土地だ。そこで敢えてうどんを出すとは、見上げた根性ではないか。しかも、だ。看板の解説によれば、出雲市の一部でしか採れないホウコを、うどんに練りこんでいるのは、どうもこの店だけらしい。

「他にはない特徴的なうどんです。」

ほーう。ならば、見せてもらおうか、宝庫うどんの性能とやらを。

ドアを開けて店に入る。開放的なテーブルが並んでいる。座ろうとすると、店主が言った。

「奥にお座敷があります。そちらの方がゆっくりできますよ。」

靴を脱ぎ、店の奥に進むと広いお座敷があった。一番奥の窓際、庭園の前の席だけがテーブル席になっている。膝がまだ完治していない私はテーブル席に陣取った。その席は寒いですよ、と店主が気遣ってくれたが、無問題である。

さて、何を食べようか。

メニューを見る。店主おすすめは鍋焼きうどんだ。しかし、私の目的は宝庫うどんだ。

「先ほど、外の看板を見られてましたよね。」

そうなんです、大梶そばにきたら閉まっていて。

「ああ、そうか。今日は木曜日か。うちはうどんですけど、いいですか?」

もちろんです。宝庫うどんが気になって入ったんですよ。釜揚げにしようかな。

「それなら、宝庫うどんの冷たいのがおススメです。釜揚げは勧めないなあ。」

それにします。

うどんが来るまで奥の庭園でも眺めていよう。

宝庫うどん

店主は調理場に戻り、準備を始めた。しかしだ。うどんですよ。この炊き込みご飯、美味そうじゃないですか。私は立ちあがり、障子を開け、調理場に向かうと、店主に告げた。

「炊き込みご飯もください。」

昨日は福岡空港で耐えたのに、今日は耐えられなかった。

「炭水化物は麻薬だ。」

ハードな糖質制限をしている知人の言葉だ。

しばらくして店主が運んできたそれは、見た目は蕎麦だ。まずは麺だけ食べてみる。うどん…だろうか。見た目に影響されてるのか、蕎麦を食べてる気がする。それも、すごく美味い立ち食い蕎麦。あれはそば粉があまり入っていない。香りは蕎麦ではない。

もう一口、今度はツユにつけてみる。甘みのあるというか、辛くないツユだ。麺はもっちり、へぎ蕎麦のような感じだ。挽きぐるみの小麦で打つのでそばのような色にも見える。独特だ。喉越しも滑らかで、うどんとは思えない。

意を決して、店主のいう通りにぶっかけにする。つゆをぶっかけ、よく混ぜる。そして、豪快にうどんを取り、口に入れる。

美味い!

辛味大根が効いて美味い。うどんだ。確かにこいつはうどんだ。これは釜揚げには無理だ。釜揚げそばになってしまう。以前、挑戦してみたが、無理だった。ブニョブニョで気持ち悪くて食べれない。こいつはゆでたてを冷水で締めて食べるのが正解なのだ。

続いて炊き込みご飯だ。ダシがきいて、鶏肉の香りがいい。おまけに具沢山だ。これにうどんが合う。炊き込みご飯と一緒に食べると一層よくわかる。こいつはうどんだ。そばではない。つゆが辛くないのは、うどんつゆだからだ。

トイレは広くて綺麗だ。温水洗浄便座だ。

うどんを食べ終わる頃、一組の客が座敷に入ってきた。店主がメニューを説明する。担々麺は不定期だとのこと。スープを近くの中華料理店で作ってるためだそうだ。今日は置いてない日だ。店主おすすめは、やはり鍋焼きうどん。原木なめこが採れるので、それを使った一品だそうだ。かけうどんとは麺がまったく違うとのこと。しかし、その客は店主のオススメを無下に断り、二人ともかけうどんを選択した。

「遅くなってごめんなさい。」

しばらくして店主が隣の客にうどんを持ってくる。店主は勝手にかけうどんをなめこ入りにしていた。遅くなったのはなめこをゆでていたからだという。ハッキリ言わせてもらうぞ。

私だって、原木なめこを食べてみたい。

「お茶も美味しい。」

隣の客の言葉にハッとした。気がつけば、私はお茶を5杯は飲んでいる。しかも熱いほうじ茶だ。それが甘くて美味いのだ。葉のせいか、水のせいだろうか。

ネットで調べて、車で向かっていたら気づかなかっただろう。自分の足で歩くからこそ、出会えた店だ。まだ知られていない味だ。これがあるから、食べ歩きはやめられないのだ。

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