石垣島で牛そばを食べる あんぶれら

初めての離島

沖縄に来て18年になるが、離島に行ったことがない。機会もなく、本部港からフェリーで30分の伊江島すら行ったことがない。古宇利島はだいぶ前に橋で繋がってしまった。新聞では橋ができると運天港からの船がなくなり病院まで遠回りになるといった論調もあったが、数年後には運天港と屋我地島を結ぶワルミ大橋が開通してその問題も解消した。古宇利島大橋は開通当時、無料の道路としては国内最長だったことや、橋からの眺望がものすごく素晴らしいことでとても人気のスポットだ。現在は宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋が国内最長である。

今回は旅行ではなく出張で離島、それも石垣島に行くことになった。

パーラー あんぶれら

那覇空港からJTA便で1時間。石垣島空港は土砂降りだった。地元の方が車で迎えに来てくれた。会議は午後からなので、まずはお昼を食べに行こうという。しかも、地元おすすめのそば屋があるので行きましょうとのことだ。沖縄だからもちろん「そば」といえば「すば」のこと。沖縄そばのことだ。

店に着いたのは11時過ぎ。すでに数名が並んでいる。駐車場は車でいっぱいなのに並んでいる人が少ないと思ったら、みんな車の中で待っていた。開店は11時半だという。10分ほど待ったところで少し早いが店が開いた。すぐにいっぱいになった。店内はそこそこ広い。客は地元ばかりのようだ。観光客らしき姿は見かけなかった。

沖縄で「パーラー」とは軽食を提供する店のことを指す。決してパチンコ店ではない。パチンコ店のことは年配者は「マシン屋」と呼ぶ。元々がアメリカ文化なのでスロットマシンが主流だったのだ。公営ギャンブルがない沖縄は人口当たりのパチンコ店の数が全国一だと記憶している。

パチスロも内地とは違いコインがでかい。内地では沖縄のパチスロ、通称「沖スロ」のことを「デカコイン」と呼ぶが、沖縄では沖スロが主流だから普通のパチスロを「チビコイン」と呼ぶ。紛らわしいので、沖スロを「30パイ」、普通のを「25パイ」と呼ぶ。パイは直径を表すφのこと。つまり25φはコインの直径が25ミリ、30φは30ミリと言うことだ。

メニューを見る。牛チャンプルーやナーベラーチャンプルー、ポークフライ定食など、沖縄本島では見慣れない料理がある。沖縄ではポークは豚肉を意味しない。ポークランチョンミート、内地の方にはSPAMと言えばわかるだろうか。これのフライというのはハムカツとはまた違うのだろう。ポークは焼いた方がうまいと思うのだが、機会があれば試してみよう。おうちごはんシリーズ沖縄編の記事になるかもしれない。

ひとりが焼きそばを注文する。昨晩は自宅で焼きそばを食べたので、私はやはり普通のそばにしたい。別のひとりが牛そば大盛りという。メニューには小、大、大盛があるが店の方に尋ねると大が普通サイズとのことだ。私は牛そば大にした。おにぎりも付いてくる。

沖縄の焼きそばは沖縄そばの麺を使う。中華麺ではない。味付けは塩味、ソース味、ケチャップ味がある。昔は沖縄そばと野菜を炒めてケチャップで味付けしたものを「ナポリタン」と呼んでいたそうだ。何年か前、琉球村のレストランメニューに「昔懐かしいナポリタン」と書かれていた。作り手からすれば懐かしいだろうが、客のほとんどが内地の観光客だからナポリタンは別に懐かしくもない。注文したらイメージしていたものとまったく違うものが出てきて、客は混乱するかクレームをつけるかどちらかだろうなと思ったものだ。

石垣島で牛そばを初体験

まずはスープを一口すする。こってりで牛の味がする。もう一口。やはり牛の味がしっかりと口に広がる。コーレーグースを加えてまたスープをすする。あれ?ぬるくて辛い。よく混ざっていなかったのか。箸でよく混ぜてもう一度すする。気のせいかサッパリした感じがする。

次に麺をすする。麺は黄色くてコシは普通。沖縄そばの麺と違い、断面がまん丸だ。肉を食べてみる。やわさかく煮込まれた肉から味が染み出してくる。が、肉ではない香りもする。不思議に思いドンブリの肉をすくってみると下からフーチバー(ヨモギ)が出てきた。これか、私はフーチバーが大好きだ。牛肉の香りはともすれば臭みになるが、フーチバーの香りがマッチして独特の味わいを醸し出す。この店の特徴なのだろうか?それとも八重山ではこのような食べ方が一般的なのだろうか。

ふと、となりの大盛を見るとてんこ盛りだった肉がなくなり、スープには大量の脂が浮いている。食べてるうちにこってりに慣れてきたのか、あまり気にならなくなる。おにぎりを食べる。ほぼ塩の効いていないご飯が口の中をさっぱりしてくれる。豚がメインの沖縄そばとはまた違う味わいで、これはこれでありだなあ。

食べ終わっても客が途切れない。むしろこれからお昼だ。外は相変わらず雨が降っているが、さっさと撤収することにした。

しかしユニークな店だ。まさかトイレが隣の工場の中にあるとは思わなかった。どの客も迷うのではないだろうか。さあ、今晩の懇親会はなにが出てくるのだろう。その前に会議だ。長丁場だが頑張ろう。二次会までに雨が上がってくれればいいんだけどなぁと願いながら店を後にした。

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