第1ターミナル とんかつ 黄金色の豚
三沢空港から羽田空港で徳島行きに乗り継ぐ。本日も羽田空港でランチだ。徳島行きの便までかなり時間があるので、ゆっくりと食事ができる。いったん外に出て、空港内のレストランフロアに向かってみる。
この場所は以前は別の店だったような。新しくとんかつ店がオープンしていた。これは入らなければならない。とんかつは大好物なのだ。
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とんかつには二種類の肉がある。まずは国産のSPF霧島純粋豚。SPFとは豚の飼育方法である霧島純粋豚は霧島高原で育てられたという意味のようだ。霧島高原純粋黒豚とは別物なのだろうか。
SPFという名称は以前から知っていた。無菌豚、くらいのイメージだったが調べてみるとそうではなく、特定の病原菌に触れずに育てられた豚と言うことだ。まずは母豚から子宮ごと仔豚を取り出して、無菌設備で肥育する。これを同様に肥育した豚と掛け合わせて繁殖させる方法のことだ。
一方は米国産の四元豚だ。日本では三元豚が主流だが、海外では四種類の品種を掛け合わせた四元豚が主流だとも聞く。いずれも捨てがたい。
悩んだ末に出した結論は「SPF霧島純粋豚ロースカツ180グラム」である。
とんかつが揚がるまで
とんかつが揚がるまで、ドレッシングをキャベツにかけるようにと、ゴマはすっておけと言われる。ん?ポン酢ドレッシング?そう言ったよな、聞き間違いではないな。これのどこがポン酢なのだろうか。メニューを確認するが、ドレッシングに関してはなんら記述がない。
企業秘密なのだろうか。
指示通りにすり鉢でゴマをする。香ばしい香りが立ち上ってくる。ソースは甘口と辛口がある。それぞれをすり鉢に加える。もちろん一対一だ。正確には一杯ずつだ。容器のサイズが見た目にも違うだけでなくい、ソースをすくう柄杓のサイズも同様に違う。トロッとコクのある甘口に対し、辛口はさらっとしている。よく混ぜて味を確認する。問題ない。一杯ずつで正解だ。
カラシを取ろうと四角い容器を開けたところ、塩であった。この店にはカラシがないのか。塩で食えと言うことか。うむ、塩で食べるトンカツもまた美味であるから、良しとしよう。
SPF霧島純粋豚 ロースカツ180g
とんかつがやってきた。カラシはさらに盛られていた。そう来たか。顧客にはカラシの消費量について主導権を持たせずに、消費量を抑える作戦なのか。せこいぞ。
まずはソースをつけて食べる。肉柔らかくてジューシー。噛むと肉汁が溢れてくる。しかしソースがパン粉をフィーチャーしてしまい、肉の味を邪魔だてする。ぼやけさせてしまう。まるで度数の合わない眼鏡をかけられたような気分だ。
うーむ。
赤だしのしじみ汁は粒が大きい。ご飯は柔らかめだがでちゃべちゃではない。これはこれで好きな炊き加減だ。
ポン酢ドレッシングは酸味控えめ、爽やかな風味。果実酢を使ってるのだろうか。ほんのりと甘みがありキャベツのえぐみを消し去り、美味さを引き立てる。醤油の風味はまったくない。
薄くスライスされ、短くカットされたキラキラに輝くキャベツが美味い。みずみずしく、シャキシャキでひんやりと冷たい。口の中の油をぬぐいとりさっぱりとさせてくれる。
このトンカツはソースで食べるものではないな。トンカツの肉に直接、塩をかける。ソースは衣につけるもの、塩は肉につけるものなのだ。箸でつかみ、サクッという音とともに、一口分を噛み切る。噛むたびに、塩が引き出した豚肉の旨味が口の中に広がり、だんだんと衣と肉が一体化していく。パン粉が肉の味を邪魔することもない。ここにキャベツの千切りを放り込む。油っこい口の中を、爽やかなキャベツが消し去っていく。
ああ、美味い。
試しに塩とマスタードで食べてみる。違う。マスタードはパン粉側の者であったか。
トンカツとは肉が攻撃、衣が攻撃支援、キャベツが後方支援の三位一体のバランスと信頼で成り立っているのだと、しみじみと感じさせられた。調味料を巧みに使うことで、攻撃力も防御力も変わってくる。使い方を間違えるとランクダウンする。おお!まるで盾の勇者の成り上がりと同じではないか。
キャベツを三回お代わりしてフィニッシュなのだ。気がつけば一時間が過ぎている。ずいぶん優雅に食事をしたものだ。
乗り継ぎ便に向かうとしよう。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)