ぶらじる
浜松町駅から第一京浜に向かったところに、気になる店を見つけた。いつか尋ねてみようと思っているうちに半年が過ぎていた。昔ながらの洋食屋のようである。
店頭には少々個性的な文字で構成された手書きのポップ。揚げ物がメインのようだ。とんかつ屋と呼んでも差し付けないような気がしないでもない。ドアを開けて店に入る。
まだ早い時間だからなのか、客はいなかった。奥に階段がある。二階席もあるのか。これはかなりの人数が収容できそうだ。
メニュー
さて、なにを食べようか。
またまた個性的な文字で記述されたメニューがテーブルに置いてあった。自慢の定食(味自慢)とある。味以外、食い物で自慢できるところなどあるのだろうか。いや、見た目も重要だ。視覚も味覚の一要素である。インスタグラムが流行ってから「ばえる」が重要視される世の中だ。もしやこの店の店主は、はるか昔からSNSでの視覚的情報拡散によるデジタルマーケティングの時代が到来することを予期していたのだろうか?
だが、待て。わざわざ「味自慢」と書いてあるのだ。視覚の方は自慢できないと、そう断り書きを手書きで入念に行ったのではないだろうか。
だが、このA5サイズ程度に手書きで伝達できる情報量はさして多くない。デジタルで言えば200バイト程度なものか。その補助手段として壁が有効活用されている。これまたデジタルサイネージの時代が到来することを予感して…ってなわけないか。
どれにしようか、散々迷って、後から来た客につられてぶらじる定食。790円は安い。
ぶらじる定食
食事の前のチェックということで卓上調味料を確認する。とんかつ屋としてはオーソドックスなセレクションである。だが、ここは洋食屋なのだろう。違うのか?どこが「ぶらじる」なのかも分からない。
世の中、分からないことばかりだ。
お盆に載せられたぶらじる定食が運ばれてきた。ミックスフライ定食といいやつだな。まずは手を拭く…え、紙ナプキンないの?店には用意されていないみたいだ。問題ない、私のカバンの中には乳児及ぼ幼児に対応できるアイテムが数多くそろっている。もちろん、ウェットティッシュも常に航空会社のラウンジにて調達している。
あれ?いつの間にかすべて使い切ったらしい。カバンの中には普通のティッシュすら見当たらなかった。
ヒレカツは肉も厚いが衣も負けていない。厚みがありすぎだ。サクッと上がっているが、衣から肉が飛び出る。ソースはかけずにマスタードのみで食べる。つけた方が圧倒的にうまい。辛みと刺激がヒレ肉の味わいを広げ、旨味をぐんと引き出す。
アジフライもさっくりでしつこくない。サクサクフライだが、衣が厚すぎて、身の厚い部分は味の香りが分っと広がるのに尻尾に近い部分は衣を食べてるような気になる。魚の香りがしない。唐揚げは味が濃い塩っぱい、見た目からもあげすぎだ。焦げた味がする。
エビフライもなかなか大きめのエビのおかげで暑い衣に負けていないごまさってもいない。サクサクに上がっているのはすごい。
漬物は塩っぱすぎて食べられない。豆腐は冷たくてさっぱり、ほっとする。ご飯はやや固め、好みの炊き方である。エビフライの下からはナポリタン、パスタケチャップ和え。洋食の定番だ。意外に味が薄い。私にはちょうどいい。
揚げ物を食べたので口の周りがべたべたである。紙ナプキンがないので仕方がない、箸袋で口を拭いた。
うーん。
私とは相性の悪い店であった。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)