香川県民は一日に何回でもうどんを食べる
一日に2回うどんを食べるという経験はそうそうないのだが、香川県ではごく普通のことだという。しかも、飲んだ後にラーメンでも、蕎麦でもなく、うどん。沖縄そばでも、ステーキでもなく、うどん。
高松市の繁華街、古馬場。ここで締めのうどんと言えば誰もが「鶴丸」というだろう。鶴丸もいい。だが、私は五右衛門派だ。しかも、前回、五右衛門に来たものの、私の前で黒カレーうどんが売り切れたのが心残りだった。
糖質制限ダイエットで大失敗
世間では「糖質制限ダイエット」が流行っている。昨年、私も3ヶ月ほど頑張ってみた。朝ごはんは半分に。昼はご飯を二口ほど。夜は炭水化物を採らない。話題のラーメン屋に行っても麺には手をつけない。定食もおかずだけを食べる。自宅では卵・チーズ・肉・魚・豆腐・葉野菜が中心のタンパク質重視の食事にした。
ところが、2か月ほどして明らかに見た目は痩せてきてるのに、お腹がポッコリと出てきて、しかも体重は増えてしまった。3ヶ月後に体組成計で測定すると、体脂肪は減ってるのに、内臓脂肪が増えたために総脂肪量は増加。筋肉量は減少。たまたま行った血液検査では、クレアチニンがものすごく低い。検査結果を見た主治医に「あれ?筋肉が少ないの?」と言われてびっくり。
炭水化物の摂取量が極端に減ったために、身体が飢餓状態と勘違いして節約モードに入り、内臓に脂肪を溜め込み、お腹が出てしまったのだ。欠食児童みたいな、痩せてるのにお腹だけが出ている、あんな感じの体形に近い。
そこで、炭水化物をしっかり摂る食事にしたところ、ようやく体重が減り出した。筋肉の減少も止まり、体脂肪も減り出したが、内臓脂肪は減らない。内臓脂肪を減らすためのダンベル体操を習い、3か月間頑張った。結果は、内臓脂肪は減らずに腹筋が付いた分、ウエストが増えるという悲惨なことに。
もう現代医学の力を借りるしかないと思った私は、以前から気になっていた小林製薬のナイシトールを使うことを考えた。ネットで調べるとこの薬の主成分は「防風通聖散」という漢方薬で、しかもこの成分を2倍も多く含む漢方薬「ツムラ62番」があるという。処方箋が必要な薬だが、主治医に相談したところ、この漢方薬は高血圧に適用となっていたため、問題なく入手できた。私は高血圧の薬を10年前から服用してるのだ。
注)半年後、主治医に漢方薬の使用を止められました。別の薬とぶつかって肝臓に負担がかかっていました。
手打ちうどん 五右衛門
深夜の五右衛門のドアを開ける。席に着き、上着を脱ぐ。ドリンクを注文してメニューを見る。一人がうどんをかたくなに拒む。
「この2年で体重が8キロ増えてやばい。」
ホントに食べないのかって、皆でやいのやいの言いながら、どのカレーうどんにするか協議が始まる。
「俺は普通の。」
「いや、黒カレーだろう。」
「すいません、黒ハバネロカレーうどんに温玉チーズ トッピング!」
「山かけうどん。」
「カレーうどんじゃないの?」
私は激辛マニアではないが、辛い物は好きだ。やはり黒ハバネロである。周囲はとてつもなく辛い、と心配する。それは楽しみだ。でも、激辛だったらどうしよう。
香川県民はうどん店でおでんも食べる
一人が言った。
「やっぱ、おでんだよな。」
高松のうどん店にはあごだし(あごはトビウオのこと)のおでんが大体置いてある。おでんをつまみながらうどんを食べるスタイルだ。好きなネタを皿に取り、味噌だれをかける。セルフが基本だ。
まずは山かけうどんが出てきた。普通にうまそうだ。さっぱりして、荒れた胃に優しく流れ込むような。山芋が胃の粘膜を保護して、明朝すっきりな感じもする。が、カレーだって、整腸作用があるのだ。私はカレーだ。黒ハバネロカレーなのだ、と言い聞かせる。
香川県民はうどんの誘惑に勝つことができない
次に出てきたのはカレーうどんだった。黒カレーうどんとの違いは、和風か洋風かの違いだとメニューには書かれている。日本の伝統的な黄色いカレーだ。あれ?うどん、食べないんじゃなかったのか?カレーうどんをがっついているのは、頑なにうどんを拒否していた人物だった。
「だって、おなかすいた。」
腹をすかせた香川県人がうどんを、しかも、ただのうどんじゃない、食欲そそる、香り豊かなカレーうどんを目の前にして、食べないわけがない。シティーホテルの一室でセクシーな美人と二人きりで迫られて何もしない男は少数派だろう。でも、ここで手を出すと嫁が、社会的地位が…何の話だ?
とにかく、減量もうどんにはかなわないということだ。彼は私のうどんが来る前に食べ終えていた。ものすごい早食いだ。
5年越しの黒カレーうどんはうまかった
ようやく黒ハバネロうどん、温玉、チーズトッピングがやって来た。私は箸でかき混ぜ、躊躇なくすする。ああ、これで明日の朝食は抜かないとな、などと考えながら、ふくよかな味わいと刺激的なスパイスに包まれた、コシのあるうどんを味わう。うまい。チーズのトッピングがさらなる深みを醸し出し、スパイスが温玉と絡み合って甘味を引き立てる。
一人が私に言った。
「それ、一本くれない?」
どんぶりから一本を取り分ける。彼は黒いうどんを口に運んだ。
「うわっ、辛っ!なんだこれ?」
大げさだろう。ピリ辛だよ。別の一人が言った。
「俺にも。」
同じようにうどんを一本取り分ける。
「なんだっ?!辛っ!マジでこれ辛くないの?」
「えっ?ピリ辛だよ。大して辛くないよ。」
「まじで?本当に激辛マニアなんだ…」
これくらいで激辛マニアなどとは、マニアに失礼である。
香川県は減量に向かない県だ。炭水化物の早食いが基本。うどんを食べるたびに血糖値を急上昇させているのだ。だめだ、こんな食生活。だから、糖尿病患者が多いのだ。ワースト3なのだ。主食で命を縮めているなんて。
それでも、あえて言おう、うどんであると!
饂飩家 五右衛門 (うどんや ごえもん)
住所:香川県高松市古馬場町13-15 AIビル 1F
電話:087-821-2711
営業時間:20:00~翌1:30
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)