みのり

朝方に沖縄の自宅を出て芝公園の社宅に寄り、荷物を置いたときはすでに１４時前になっていた。さて、何を食べようか。芝商店街で個人的に鉄板は刀削麺なのだが、これから大門に行って、株主優待券を買わねばならない。ならば、将監橋を渡って店を探した方がいいだろう。ところが、多くの店が１４時でランチを終えていた。

なんということだ！

これでは私の選択肢は松屋、立ち食いそば、マクド、CoCo壱に限定されてしまう。それはない、絶対ない。

松屋はどこでも食える。沖縄には無いが。
立ち喰い蕎麦の気分ではない。ガッツリ食いたい。
マクドは論外だ。私はマクドを口にすることができない。
CoCo壱は沖縄でも食える。そもそもカレーは今はいい。

大門通りを渡って店を探すが、やはりどこもやっていない。せっかくのランチが、貴重な一食がダメになるかと諦めかけたそのとき、軍鶏親子丼の文字が目に入った。

親子丼。

久しく食べていない気がする。いいね、なんとなくいい感じがする。この店は当たりだ。私の感が囁く。食べログで調べるまでもない。私は地下への階段をゆっくりと降りると、店に入った。店内には客が一人だけ。カウンターに通されると、メニューを渡される。ゆっくりと見たかったのだが、閉店が近いのか、注文を急かされる。迷わず、親子丼だ。

メニュー

壁には様々なメニューが張り出されている。いずれも魅力的な品ばかりだ。サービス料も深夜料金もとらないと宣言されているのがほほえましい。まあ、小料理店でサービス料や深夜料金を取る店など、聞いたこともないのだが。

メニューには手書きの絵が添えられている。価格は１円単位。気持ちはわかるが、そこまで細かい客が、このような店に来るのだろうか。庶民的な店だとは思うが、この界隈、決して土地や家賃が安い店ではない。

むしろ高いだろう。

郊外の住宅地の駅前あたりにある小料理屋さんなら、価格を気にする人もいるだろうか。いや、酔っ払いは気にしないように思うのだが。リーズナブルを強調したいのだろうが、こだわりすぎな気もする。

軍鶏親子丼

などと店内を眺めていたら、軍鶏親子丼が運ばれてきた。見た目は表面の玉子が手前が半熟、奥がしっかりと火が通っているが、通り過ぎではない。どんぶりの溶き卵は煮立たせたらダメなのだ。かといって、どんぶり好きの皆が半熟玉子が好きだとも限らない。しっかり火を通して欲しい人もいるだろう。なので一見さんにはこれがギリギリの答えなのだろうか。

まずは味噌汁から。甘くない白味噌仕立て、みつばの香りが鼻腔をくすぐる。次に菊とエノキをあしらった煮付け？和え物？出汁で味をまとめているだけなので、素材の味を楽しめる。箸休めにもいい。そして、本命の親子丼だ。しかも軍鶏だ。一人で親子丼を食べるのは、何年ぶりのことだろうか。レンゲですくって一口。強烈な玉子の甘みが口の中に広がる。そして、甘さ控えめの、なぜか爽やかに感じられるたれ、玉子とタレを吸った米。

美味い。

肉を噛みしめる。ムネ肉のようだが、噛みしめると味がある。パサパサしてない。柔らかい。鶏肉よりも味が濃いということか。これにチョレギサラダっぽいのを食べる。なかなか相性がいいぞ。そしてまた一口。今度は肉がメインだ。柔らかい。噛みしめるとしっかりと鳥の味がする。いいねえ。今度は小鉢と合わせる。うん、いいよ。

何口か食べてから、山椒を振りかけてみる。甘み、旨味の後に刺激が加わる。これはいい。もともと山椒の香りが好きなので、これはたまらない。さらに食欲を刺激される。今度はぬか漬けだ。これは自家製か？今朝、自宅で食った我が家のナス漬けも美味かったが、勝るとも劣らない。カブのぬか漬けも美味い。

一気に食べ終えると、締めはムースだろうか。甘さ控えめで、紅茶の香りがする。大人のデザートだ。

いいな、この店。夜のメニューも豊富だ。今度、ひとりで飲みに来よう。

みのり（食べログ）