秋田空港 杉のや
朝六時半に家を出て、羽田で乗り継ぐこと4時間半。何十年ぶりかに秋田に来た。まずは空港で知人と待ち合わせだ。現在時間は12時過ぎ。知人の便が14時55分着。3時間ほどだ。ネットがあれば仕事はできる。
事前に調べた情報では、秋田空港のレストランは二箇所。食べログの点数が高い方が「そら」、郷土料理が「杉のや」。秋田の郷土料理といえば、きりたんぽにいぶりがっこ。
さて、何を食べようか。
まずはそらに行ってみる。美味そうだが…なんか違う。続いて杉のや。わっぱ飯かぁ。こちらも比内地鶏を激しくフューチャーしているなあ。ん?一つの料理に目を奪われる。
「比内地鶏稲庭つけ麺」
美味そうだ。そうか、稲庭うどんも秋田だったか。よし、これに決めた。
店内に入り、メニューを再点検する。ミニわっぱ飯とうどんのセットも捨てがたい。秋田のうまいものとの定食もありだが…いや、初心坦懐!違う、それは虚心坦懐だ。今は初心貫徹だ。うどんを注文するべし。
昼過ぎだけあって、店内には私の他に客はいなかった。しばらくして運ばれてきたつけ麺の、キラキラと輝く稲庭うどんに目を奪われた。
比内地鶏稲庭つけ麺
まずはスープを一口。カツオと鳥の効いたつゆがうまい。豪快に大根おろしと薬味ネギをぜんぶつゆに入れた。再び一口。大根おろしがつゆをマイルドにしている気がする。うどんを掴み、お椀に投入、いや、没入。見た目にもキラキラして美しいうどんの喉越しは激しく滑らかだ。勝手に喉の奥に滑り込んで行くようだ。そのまま飲み込む。喉越しが気持ちいい。
再度うどんを掴み、お椀に没入。今度は薬味と一緒に食べる。たっぷりのネギの甘みとシャキシャキとした食感がたまらない。つゆをたっぷり吸った薬味を噛むと、口の中でたっぷりとつゆの甘みを開放する。肉は繊維が鶏肉よりも荒々しい。歯ごたえはあるが柔らかい。噛めば噛むほど味がする。これは食べるよりも出汁に適していると思う。地鶏の特徴だ。
一心不乱に食べる。量は少ないかと思ったが、そんなことはなさそうだ。見た目よりもボリュームがある。
店内のBGMはインストルメンタルのJポップだ。あー、なんだっけ、これ。曲が思い出せない、すごく知っている曲のはずだ。メロディーと伴奏は思い出せるのに歌詞がまったく出てこない。音階で検索できるか?無理だ。いや、こいつは有線のはずだ。有線放送の番組表から調べれば…検索するが、チャンネルが多すぎてダメだ。
残念なことに、食べ進めるにつれ、つけ汁はぬるくなっていく。冷たいうどんを付けてるのだから仕方がないのだが、最初の頃の熱々と冷たい麺の組み合わせが生み出す美味さがなくなり、ただの冷めたつけ汁になってしまう。これは食べる速度も勝負なのだろうか。薄くなったつけ汁は、飲むにはいい濃ゆさではあるのだが、うーん。残念。
ふと、思い出した。店に入るとき、レジの後ろに有線放送のチューナーが見えた気がした。そいつのチャンネルを見ればいいのか。トイレは店の外にある。店員にトイレの場所を尋ねると、やはり店を出て左だと言う。席を立ち、入口でレジの後ろを見る。やっぱりチューナーがあった!チャンネルはI-10だ。トイレに行き、洋便器に腰掛け、スマホでチャンネル検索をする。
「もう、笑うしかない」
そうだ!平松愛理だ!
色々とスッキリしたので、トイレを出てから店に戻って支払いを済ます。いやはや、便利な時代になったものだ。
数年前に五十路となったバツイチ男性。昨日は沖縄、今日は北海道、明日は四国…出張三昧の日々、三年間で制覇した店は千店舗を超えた。日本全国及び海外での食事を記録したブログである。五十路とは本来「五十歳」を意味するが、現代社会では「50代」と誤った認識が定着している。それにあやかりブログのタイトルを名付けた。(詳しく読む…)